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放浪紀行

跳ねる髪が嫌い

3月6日(月)

僕の今のいる街、それは運輸倉庫と製紙工場しかないような街で、東京の最果てとも言える。東京の中で最近できた街、つまりは埋立地だ。

この街で僕は育った。


しかし、僕はそれを誇りとは思わない。
治安はそこまで良くはなく、交番はない。また駅近くにも居酒屋とコンビニしかなく、白と灰色のアパートが連なる。また、登校班の待ち合わせ場所はパチンコ屋の前であったりとか、とにかく良くはない街だ。

 

僕は知らなかった。この街は、寂れた街だったこと。普通の街はシンナーの臭いが充満していないこと。この街が見捨てられつつあるということ。
最悪の街だったのだ、自分の笑顔が溢れていた街は…と痛感するたび、自分の運命を呪った。

 

まだ中学の友達には全然言えていないのだけれど、母と父の仕事が落ち着いてきた頃、僕はこの街を離れる。離れてしまったら最後、もう来ることなんてなくなってしまうだろう。勿論、小中学校で楽しくやっていた仲間とは疎遠になる。

 

そのことを思うたび、自分は自分に問いかける。忘れ物はないか、と。
離れることが決まった時、嬉しくてたまらなかった気持ちは、なぜかこの街に何かを忘れているような気がしてならないようになった。


それは友情か、愛か、恋か、はたまた普通にモノなのか、そんなことは分からないけれど、こんな淀んだ街に置いてきたものなんて、一番淀んだものに決まっている。それは、